チャートを読み間違える原因(2)

國分秀星 Q.H.P.

『チャートを読み間違える原因』 において、知識不足が原因となって失敗する場合について主に述べた。 知識を得るには勉強すればいいのだが、いくら知識を身につけても見落としてしまうものがいくつかある。 そういった事柄は基本的なものばかりなのに、明示的に書き表した本がないため意外な盲点になっている。 そのうちの最たるものは「チャートしか見ていない」ことだと私は考える。

チャートしか見ていない例として 『ホラリーに関する誤解(2)』 に書いたような、実際にはコレクションになっていないものをコレクションと見誤った(コレクションの定義を知らなかった?)例があげられる。 ホラリーでは、天体が正確にアスペクトを形成する日時を知ることは成否を判断する上できわめて重要だが、それはチャートを見ただけではわからない。 だから天文暦を同時に参照する必要があるのだが、チャートを計算するときだけしか天文暦を見ていなかったり、その手間を省略するような横着をすると失敗することがある。

ところが、近頃はコンピュータと占星術ソフトが普及したせいで、天文暦を持っていないという者がプロを名乗る者の中にも見られるようになってしまった。 持っていたとしても、値段ばかり高くて位置精度の低い国産の天文暦だけというのでは情けない。 天体の位置精度が低いということは、アスペクトが正確に形成される時間の順番が入れ替わる可能性があり、その場合、成否の判断がまったく逆になることもあるからである。

もちろん、こういったことはホラリーに限ったことではなく、すべての占星術に当てはまる。 たとえば惑星が留の場合、その状態から順行に移るのと、逆行に移るのとでは解釈が異なるし、天体の移動速度によって、その天体が及ぼす影響力の強弱も変わる。 影響力の弱い天体によって表示される事柄にはあまり期待できないから、ネイタルにおいても占断が変わるだろうし、イレクションであれば、そういった時間は選ばないということになる。

占星術の歴史を振り返ればわかることだが、そもそも占星術とは天変から未来を予知しようとするものであり( 『占星術の歴史(概観)』 を参照のこと)、言い換えるなら、天体の動きを解釈することがその本質である。 したがって古代において「ホロスコープ占星術」と言った場合、天変を単独で扱うのではなく、他の天体も考慮して総合的に解釈するという意味合いも含まれる上に、自然現象全般を解釈するという漠然とした体系から天文に関することだけを抽出したことが表現されているのであり、先に述べたようなアスペクトが形成される時間的順序などは当然判断材料として用いられていた。

ところが現代における「ホロスコープ占星術」とは、星占い(星座占い)と区別するための言葉になっているだけで、未来予知を除いて、まったくと言っていいほど天体の動きを考慮していない。 むしろ天体が存在する黄道上の位置に意味を見いだそうとしたり、チャートを図柄として象徴的にとらえ(たとえばヨッドやミスティックトライアングル)何らかの意味づけをしようとしたりと、天体相互の動的な関係を解釈することを放棄しているかのようだ。

こうした現代の傾向は占星術を広く普及させるという点においては有効かもしれない。 古典的技法、すなわち占星術本来の解釈の仕方に沿ってチャートを判断するよりもはるかに簡単で誰にでも理解できるからである。 (それによって導き出された「占断」が誰にでも理解できるものかどうかはまた別の話である。)

これを「時代の流れ」のひとことで片づけてしまうとしたら、それは安易すぎる。 ヘレニズム期から17世紀あたりまでの占星術における変遷は進化としてとらえることができるが、現代の占星術は、元々の占星術の中から簡単な部分を取り出し、それに対して、本来は占星術とはあまり関係のないはずの人間たちが寄せ集めの知識や思いつきを継ぎ足したものというのがふさわしい。 したがって、天体の動きよりもチャートそのものに重点を置くという点において、ホロスコープ占星術と言うよりは「チャート占い」と言う方が正しいだろう。


以下は余談である。

オリビア・バークレイの"Horary Astrology Rediscovered"に「グランドトラインは伝統的には不運なものと解釈されていた」という意味のことが書かれている。 私はこれの引用元を問いただした。 なぜならこれはグランドトライン自体を解釈しようとするもの、つまりグランドトラインの有無に意味づけをしようとするものであり、あまり伝統的な解釈とは思えなかったからだ。 これに対するオリビア・バークレイの回答はおおよそ次のようなものであった。

「1950年代から60年代にかけてイギリスでは、グランドトラインについてそういう風に教えられていた。 アル・ビルニならそういうことを言いそうな気がするが、改めて探してみると古い本の中にはそういう表現は見あたらない。 もし私たち二人で探しても見つからなかったときは、この考え方を破棄しよう」

こうしたわけでいろいろと探し始めたのだが、結局、これは19世紀以前の本(少なくとも英語で読めるもの)には見あたらず、唯一見つかったのはチャールズ・カーターの"The Principles of Astrology"の中にある以下の一節である。

こうした構成(グランドトライン)を中世のライターたちは不吉なものと見なしていた…

"The Principles of Astrology"の初版は1927年だし、50年代、60年代におけるカーターの影響力は絶大なものであったから、おそらくこれが出所だろう。 しかし、今となっては確かめようもないが、カーターは「中世のライターたち」が書いた本を実際には読んでいなかったと私は想像する。 古い占星術の本において、アスペクトはこうした「かたち」ではなく、天体同士の組み合わせについての記述がほとんどだからだ。 ましてやカーターが言うようなことを書いている中世の占星術師は、私が調べた限りでは今のところ見つかっていないのである。 (もし見つけた人がいたらぜひ教えてください。)

2000年5月
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