チャートを読み間違える原因

國分秀星 Q.H.P.

本稿は1998年5月30日のセミナーで話した内容の一部を文章化したものである。 セミナー受講者に配布したハンドアウトでは「失敗する原因」という見出しがつけられており、 単にチャートを読み間違うだけでなく、占い師としてクライアントの期待に応えられずに失敗することの原因にも言及している。 実際にはここに書いた以外にも「失敗する原因」についての項目があるのだが、それらについては機会を改めて発表したい。

占い師が気づく・気づかないに関わらず、 失敗する原因のほとんどは「きちんと学んでいない」という一言で片づく。 きちんと学ぶには、やはり経験豊富な占星術師の指導を受けるのがベストだ。 私自身、他人に教えを請うのがあまり好きではないため、ずいぶん遠回りをしてきた経緯があり、 この点は特に強調したい。 (ただ、遠回りしてあらゆるものを見てきたため、本物と偽物を見分けることができるようになったのは不幸中の幸いか。)

これは占星術以外のことにも当てはまるが、基本的に、知識を得るには本を読まなければならない。 ところが、人間というものは多かれ少なかれ自分勝手に物事を解釈してしまうところがある。 自分がすでに持っている知識と経験の範囲内で物事を理解しようとするからだ。 自分の知らないものが存在すること、すなわち未知のものに対する恐怖であり、誰もがもち得る資質と言える。 また、自分にとって都合のいいように解釈してしまう場合もあるが、これは主観の強い人間に顕著だ。 そこで、間違って理解したものを正すために「習う」のである。 ただし、日本では間違ったことしか教えられない人間ほど著名であるということに注意しなくてはならない。

以上に述べたことをひとことで言うなら「正しい知識を身につける」ということであるが、 現代において占星術を学ぶ上で一番の障害となっているものもそこにあり、これまでに何度も述べてきたので、 ここではそれ以外の事柄について説明する。

基礎ができていない
今までにいろいろな人たちから「どうしたら占星術の腕前が上達するか?」という質問を受けた。 私はいつも「基礎をしっかり身につけて、それを何度も反復して実践するしかない」と答えるのだが、 どうも私の意図を誤解する人が多い。 つまり私が言う「基礎」を「天体、サイン、ハウス、アスペクトの意味」と勘違いする人が多いのである。

たしかに天体、サイン、ハウス、アスペクトの意味を覚えることは重要ではある。 しかしながら、これらは「初歩的な知識」であって、1ヶ月もあれば誰にでも覚えられるはずだ。 そういう簡単なことを何度も反復したところで大した意味をもたない。 反復したからといって理解が深まるというわけではないからだ。 初歩的な知識などは、しっかりしたテキスト(日本語で書かれたものは当然除外する)を学べば一度で身につくことである。

余談だが、今から十数年前、会合の席上でとある大先生が「アスペクトを覚えるのに6年かかった」 とおっしゃっているのを聞いたことがある。 おそらく自分より経験の浅い人間たちを前にしてそれを言うことで萎縮させようとしたのだろうが、 6年もかけないと覚えられないくらいこの人は頭が悪いのかと私は思った。

私が言う基礎とは「ネイタル、マンデン、ホラリー、イレクションで使われる技法を完全に理解すること」である。 ネイタルしかやらないからホラリーやマンデンは勉強しなくてもいいというのは認識不足だ。 なぜなら、マンデンで扱うチャート(触、留、会合)は個人の生活にも影響を及ぼすし、 イレクションではネイタル、マンデン、ホラリーの技法が使われるからである。 鑑定の現場ではそれが必要になることが多々あるのだ。 ネイタルだけでは占い師としてやっていけないし、言うまでもなくホラリーだけでもやっていけない。

もちろん最初は本を読むことでそれらの技法を知ることになるが、運転教本を読んだだけでは車を運転できないのと同じで 、知っているだけでは使いこなせない。 また、1枚のチャートを見るときでさえ、ひとつひとつの技法をいくつか組み合わせる必要がある。 ところが、どれとどれを組み合わせるかはチャートごとに異なる。 すなわち同じ読み方が常に通用するとは限らないのだ。 こうした読み方、つまり技法の組み合わせ方は経験を繰り返すことによってしか得られない。 したがって最初のうちは経験豊富な占星術師に習うことで、それを補うべきだ。

モダンな占星術で使われている技法は、組み合わされるべきもののうちで使用頻度の高いものしか網羅していない。 個人の性格分析しかしないアマチュアにはそれだけでいいのかもしれないが、プロとなるためには不十分である。

インスピレーションを使っている
私が見たところ、ほとんどの占い師は基礎ができていないだけでなく、初歩的な知識すら的確に理解していないため、 応用が利かず、あてずっぽうで読むことしかできない。 テキストを自分勝手に解釈するだけでなく、チャートも自分勝手かつ主観的に解釈しているわけだ。 タロットから占星術に流れてきた人間はとくにこの傾向が強い。

16世紀の占星術師ジェローム・カルダンは占星術で重要なこととして、理性、分別、経験の3つをあげている。 このうち「経験」については重複するので述べないが、占星術師に求められる資質は知性(分別=sense)と理性であり、 物事を的確に認識・理解し、合理的に判断することができれば、霊感も透視能力も必要ない。 逆に言うと、知性と理性のない人間はあてずっぽうで読むことしかできないのである。

チャートをインスピレーションやあてずっぽうで読んでいると、いつかは必ず失敗する。 なぜなら、どちらも主観的なものであり、自分の知らないことが起こり得ることを考えられないからである。 もし運良く失敗しなかったとしても、それはロシアンルーレットと同じで、単に「失敗を免れた」というだけであって、 成功を意味するわけではない。銃弾が頭を打ち抜くときが確実に来るからだ。

あてずっぽうでチャートを読むことの発端となったのは、私が思うに、 マーガレット・ホーンの著書"The Modern Textbook of Astrology"である。 それぞれの天体、ハウス、サインに対してキーワードをいくつか与え、 そのキーワードをつなぎ合わせることで解釈しようとするやり方で、 タロットのコンビネーションリーディングに似ている。 このやり方はキーワードが正しいときにはある程度(アマチュアのレベル)までは読めるのだが、 勝手にキーワードを付け足したり、拡大解釈したときは確実に失敗する。

現実にはキーワードをつなぐことすらできない者が多く存在する。 「木星とトラインだからいい」「土星と合だからだめ」という短絡的な解釈しかできない者が意外にもプロを自称する者の中にいるのだ。

ここまでは占い師個人の未熟さだけの問題で済むのだが、困ったことに、 なかには「人間には自由意志があるから占いどおりにならないこともある」と言って、 はずしたときの言い訳をする占い師がいるのである。 これは自分の技術の未熟さを棚に上げて占星術そのものに責任を転嫁しようとする冒涜行為に他ならない。

自由意志というのは、ある状況下における問題解決のあり方を意味する。 つまり、問題に対してどういう解決手段をとるか、いくつかの選択肢のなかから選ぶことである。 占いとは、依頼者がどういう選択を行うのかも含めて未来予知をするものであるから、 はずした言い訳に自由意志を持ち出すのは詭弁にしか過ぎない。 素直に自分の勉強不足を認め、それを改めるべきである。

『人間の行動は、たとえそれが自由意志によるものであっても、堕落した性格や無知に起因するものであるから、天体によって強制された結果だと言って差し支えないだろう』
ジェローム・カルダン

レクティファイしていない
ヘレニズム以前のチャートを使わない原始的な占星術に逆行しようとするのではない限り、 正確なチャートを作ることは実際に占う上でもっとも重要なことである。 ホラリーとマンデンでは難なくチャートを作ることができるが、ネイタルではそれが難しい。 自分の生まれた時間を知らない依頼者は多いし、第三者について依頼されたときは誕生日すらわからないことがあるからだ。

ネイタルチャートを扱う必要があるとき、もし正確な出生時刻が不明だったとしたら、 それを過去の出来事から割り出すのは占星術師の仕事である。 「母子手帳を確認してから来てくれ」と言う占星術師がいるとしたら、 レクティファイというネイタル占星術における基本中の基本を知らないことを自ら宣言していることになる。 恥ずかしくないのだろうか?

また、依頼者が自己申告する出生日時は実際と大きくかけ離れていることもあるので、 出生時刻が不明な場合と同様に確かめてみる必要がある。 私がこれまで経験したうちで最大のものは2週間のずれがあった。 月どころか、太陽・水星・金星までもサインが変わってしまうのだから、 実物(本人)を目の前にしても違和感がはなはだしかった。 それ以来、たとえ母子手帳を見せられても、必ずレクティファイして確かめるようにしている。

横着な、あるいは基礎ができていない占い師はレクティファイをせず、 ヌーンチャートやサンライズチャートで判断するようだが(ひどいのになると、天文暦を開くだけという者もいる) ハウスルーラーを考慮せずに具体的なイベントを予測することは不可能である。

私は必要がない限りネイタルチャートを使わずにホラリーだけで鑑定する。 依頼の内容によっては複数のネイタルチャートを作る必要があるが、レクティファイに時間がかかりすぎるため現実的ではないからだ。 母子手帳に出生時刻が記載されていればたいして時間はかからない。 しかし現実には「朝の9時頃」という程度にわかっていればいい方で、 漠然と朝とか夜しかわからない場合がほとんどである。

もし事前に頼んだわけでもないのに依頼者が何時何分と出生時刻を申告したなら、 それは占星術に関心が深い人であり、たいていは自分で自分のチャートを読もうとしたことがあるはずだ。 こういう人間は、自分では読みきれないから占い師のところに来るわけで、 占い本来のあり方を逸脱する場合があるので注意が必要である。

たとえば依頼者が娘さんの結婚のことで占い師を訪れたとする。 依頼者が母親なら自分の出産した子供の出生時刻をある程度覚えている。 また予約を受け付けた時点で母子手帳を確認してもらうことも可能だろう。 ところが娘さんの結婚相手については出生時刻がわからないというのは当然のごとく起こる。 さらにお見合いで複数の候補がいたらどうなるのか、想像してみるがいい。

聞かれもしないことに答えている
「頼まれもしないのに占うべきではない」というのは占いの原則である。 この原則はさらに「聞かれもしないことを言ってはならない」ということでもある。 これについて異論を差し挟むようなら、占い師を名乗る資格はない。

いろいろな占星術の仕事ぶりを見ていて気になるのは、天体の影響だとかアスペクトなどについての専門的なことを話すことである。これはまったく不要である。 依頼者が知りたいのは「占いの結果」であって「占星術の技法」や「結論に至るまでの過程」ではない。 先に述べたように、自分のネイタルチャートを読もうとしたして果たせなかった依頼者(?) の場合は専門用語や判断の理由を聞きたがるかもしれない。 しかし、一般的には「難しくてわからない」と言われることになる。

これは、専門用語をちらつかせないと、自分を占い師と思ってくれないのではないかという不安の表れであって、 これをやる占い師はたいていレベルが低い。

たとえば「彼と結婚できるか」と聞かれたのに対して、 ただ相性の良し悪しを述べるだけでは答えになっていないから占いとは言えないし、 聞かれもしないことを言うという点では同じことになる。 依頼者が知りたいのは結婚できるかどうかだからだ。 もちろん、できる/できないを答えた後に、付随する質問として相性について聞かれたのならこの限りではない。 これをやるのは「答えを出せない」下手な占い師であり、 占いの本質からはずれた人生相談やカウンセリングなどでお茶を濁すという特徴がある。

もうひとつあげたいのは「グルコンプレックス」をもった占い師である。 占える、すなわち他人の宿命や運命を読むことができるようになったのをあたかも自分がグルにでもなったようなつもりになって、 依頼者に対して説教めいたことを言うタイプだ。 その例として、あるメーリングリストに流れたメッセージを発言者の許可のもとに公開する。

> 二.三日前のことです。
> 地元では有名な、ある占い師のもとへ友人といきました。
> 四柱推命とのことですが、一緒だった友人は次にようにいわれました。
>  「今年中にあなたが結婚しなければ、
>   身内の誰かが死にます。それがいやなら結婚しなさい。
>   今年結婚しないと一生結婚できない・・・」
> 四柱推命でそのような命式があるのかどうか、勉強不足の私にはわかりません。
> 年齢的には、世間から見れば、結婚しているべき、年だから
> このようなことをいわれるのか?
> 現在、つきあっている人もいませんし、
> とうていムリに近いと、思えることです。
> ラジオなどにもでていて、色々な知人が、あの先生はあたるよ・・と
> 言う人だけに、とてもきになります。

引用を許可してくれた方は、断片的にしか聞いていないし、この占い師が一個人として「早く結婚しなさい」 と言うために、占いの結果としてではなく、あくまでも個人的なコメントとして述べたのだろうと推測しておられる。 しかしながら、依頼者を不安に落とし入れるとしたら、それは占い師として以前に人間として最低である。 (おまけに8月も半ばを過ぎているのに年内に結婚しろというのは非常識だろう。)

自分の宿命や運命は、自分自身で処理すべきものであり、占い師というのは、その判断材料とするために占断結果を提供する者である。 最終的な判断は依頼者本人がしなくてはならない。 もし、それ以上のことを言うとしたら単なるお節介だけでは済まず、他人の宿命に干渉することになり、 坂道を転がり落ちるように占い師自身の運勢が悪化することを肝に銘じるべきである。

1998年8月
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