ホラリーに関する誤解(3)

國分秀星 Q.H.P.

『ホラリーに関する誤解』『ホラリーに関する誤解(2)』において、シルビア・デ・ロングの"The Art of Horary Astrology in Practice"(American Federation of Astrologers, LCCCN: 80-51520)に起因すると思われる間違いを指摘したが、ようやくこの本を手に入れたので検証してみたい。

ただし、伝統的な技法とモダンな技法の差異については触れない。出版年度が記載されていないので、いつ出版されたのか明らかではないが、例題として収録されているチャートのなかでもっとも新しいものが1979年の日付であることから、おそらく1980年か1981年に出版されたものと思われる。つまり、RegulusからChristian Astrologyが再版される前のことなので、技法の違いを指摘するのは無意味だからである。 また、この本の間違いをいちいち上げていると、かなり厚い本が1冊書けるくらいの分量になってしまうので、石川源晃氏が『応用・占星学入門』に書いた誤りに関することと、当時の水準から見ておかしい点に限定する。

ホラリーチャートの有効期間
"Art of Horary Astrology in Practice"の8〜9ページにかけて、次のような記述がある。

I have found that the chart generally rules for about three months. There are exceptions, which I will discuss, but it is well to keep in mind, since often a person's objective will change after three months.

もし3ヶ月程度で「目標」が変わるのなら、それは安易な気持ちで占ったからであり、依頼者のそうした態度はチャートに表示されているはずである。(軽々しく占うなというのは全ての占いに共通することだが、そういうことを誰かに習わなかったのだろうか。) また、デ・ロングは「可能な限り、ホラリーの裏付けを得るためにネイタルチャートを使う」とその直後に述べているが、これは自分はじゅうぶんな答えが出せるほどホラリーを使いこなせないと公言しているようなものである。

デ・ロング女史はこの後に裁判、企業経営などを占う場合を例外として述べているのだが、石川氏はこの例外を除外してしまった。 しかし、ホラリーを実践していればわかるが、現実にはそういった例外だらけであり(と言うより、デ・ロングが述べている例外のほうが普通だと私は思うのだが)、例外を除外して原則だけを述べるのは、いくら入門書とはいえ問題があるだろう。

ペットを示すハウス
21ページと169ページに『人によっては(とくに高齢者、子供のいない人、一人暮らしの人)ペットは子供と同じであるから、第5ハウスがペットを表す』という記述があるが、これは詭弁である。この論理でいくなら、配偶者を友だちのように思っていれば第11ハウス、兄弟のようにつき合っている友だちは第3ハウスなど、際限なくハウスを入れ替えることが可能となってしまう。

この本の169ページと170ページに行方不明のペット(犬)について占った例題がある。チャートデータは以下の通り。

[Chart 78: Oct. 14, 1973, 10:15 a.m. EDT, 81W14 28N58]
[Chart 79: Dec. 1, 1976, 2:40 p.m. EST, 81W14 28N58]

Chart 78は第5ハウスルーラーが第6ハウスにあるし、Chart 79では第5ハウスにある土星を犬のシグニフィケーターと見ているが、土星は犬のナチュラルルーラーであり、どちらのチャートも第5ハウス関係を犬のシグニフィケーターとしても説明がつくのは単なる偶然でしかない。こういうやり方をしていると必ず失敗する時が来る。事実、Chart 79でデ・ロング女史は第5ハウスだけではじゅうぶんな説明がつけられないため、補助的に第6ハウスルーラーのほうも見ているが、これは中途半端だ。その時点でペットを第5ハウスとすることに疑問をもつべきなのだが。

成就の時期
168ページに"TIME MEASURE"というテーブルがあり、"Cardinal signs on succeedent houses equal weeks"のように記載されている。このテーブルの下には「パート1のBasic Considerationsのコメントを参照のこと」としか書かれておらず、パート1のほうに戻ると「いつ?の質問に答えるのは難しい。パート3を参照」とあり、結局テーブルについて何の説明もしていない。(私はこれを見て呆気にとられた・・・。)このような記述ではホラリーについて何も知らなければ勘違いするのも無理はないが、このテーブルの使い方は石川氏が『応用・占星学入門』で述べているのとはまったく異なる。

石川氏は『応用・占星学入門』でアイビー・ジェイコブスンの"Simplified Horary Astrology"を「名人芸」と指摘しているくらいだから、この本を読んだことがあるのだろう。(まさか読みもせずに他人を批判したわけではあるまい。)だとしたら、ジェイコブスンがこれと同様のテーブルと共にその使い方を説明しているのを読み落としたのだろうか?(Simplified Horary Astrology, pp.70-71) それとも何か別の意図があったのだろうか?


以上のように『応用・占星学入門』における間違いは、石川氏が参照した"The Art of Horary Astrology in Practice"に基本概念を曲解している記述が含まれていたことが原因である。石川氏は単にそれを右から左へ写しただけなのだが、情報を吟味するために必要な知識と経験が不足していたのが残念だ。無批判に情報を吸収することがどれだけ無意味かということの良い見本と言えるだろう。

なお、訪星珠著『ホラリー・アストロロジー/宿縁と占星学』の38ページにある、水星がおとめ、金星が第6ハウスの場合は行方不明の犬はどこかの家で飼われているということの根拠となるような記述はデ・ロングの本には見られなかった。

2001年3月
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