理論と実践

國分秀星 Q.H.P.

占星術を実践する、すなわちチャートを読むためには、その裏付けとなる理論を身につける必要がある。 もし、理論の裏付けも無しにチャートを判断したとしたら、それはあてずっぽうである。 プロを名乗る者があてずっぽうでやっているとすれば無責任きわまりない話だ。 そこで問題になるのが、どの程度まで理論を身につければいいのか、すなわちどこまで勉強すればいいのかということである。

まず、実際に占い師としてやっていくためには、ネイタル、マンデン、ホラリー、イレクションの各分野についての技法を完全に理解することが求められる。 占星術というのは、1枚のチャートだけで判断できるほど単純なものではないからだ。 たとえば結婚式の日取りを決めるという依頼があったとしよう。 ネイタルしか知らなければラディカルイレクションしかできないし、ホラリーだけならホラリーイレクションしかできず、片手落ちになってしまうのだ。 さらにマンデンイレクションを併用しなければ、いくら立派なイレクショナルチャートができたとしても大した効力を持たない。

ホラリーも、一見、1枚のチャートだけでできるように見えるが、現実にはホラリーの技法だけでは通用しないケースが多々ある。 ホラリーを実践するためには同時にマンデンの知識が必要であり、クォリファイングホラリーディプロマコースにマンデンのレッスンが含まれているのはそのためである。 したがって、もしマンデンのレッスンを省略したとすると、占い師(practitioner)を養成する「ディプロマコース」ではなくなり、単なる「趣味の教養講座」に成り下がってしまうのである。

このように、単純に見えるような事柄でも、複数の要素(チャート)が絡み合って初めてイベントが発生することが理解できたとして、どういった本を学べばいいだろうか。 これはすでに何度も繰り返し述べてきたことだが、やはり17世紀以前の本を読むべきである。 モダンな占星術では多くの技法が切り捨てられてしまっているからだ。 たしかに切り捨てられたものは使用頻度が低いかもしれないし、容易には理解できないかもしれない。 しかし、実践を続けていくうちに、モダンな技法だけでは読み切れないチャートが必ずでてくる。

そういった読み切れない、もしくは論理的に説明のできないチャートに遭遇したとき、多くの人間は占星術に限界を感じる。 ところがそれは占星術そのものの限界なのではなく、自分自身の知識の限界なのである。 したがって、難解なチャートに出会ったときは、さらに勉強をする機会だと考えるべきだろう。 決して、つじつま合わせのためのおかしな理論を作り出したり、「占星術は当たらない」などと言ってはならない。 古い技法を学び、それに沿って忠実に解釈すればよい。

たとえばこんな話がある。 今年のワールドカップの優勝チームをイギリスの占星術師とノルウェーの占星術師が予想した。 両者共にかの国では有名な占星術師である。 ところが、同じチャートを解釈したにもかかわらず、二人が出した結論は相反するものとなり、 結局、イギリス人の予想ははずれ、ノルウェー人の予想は見事に的占となった。 この原因は、ノルウェー人がウィリアム・リリーの示した理論に沿ってチャートを解釈したのに対して、イギリス人はそれを無視して自分が作り出した理論を用いたからである。 このイギリス人はリリーの説明を正しく理解できていなかったために新しい理論を作り出したものと思われるが、 自国が生んだ偉大な占星術師を軽視したために占断がはずれるというのは皮肉なものだ。

また、このように新しい理論を作ってしまう占星術師は集中力と注意力が散漫でチャートを判断する際に重要な事柄を見落としていることも多い。 すなわち、正しい理論を身につけているのに、該当する項目を見落としているため、当たらないと思いこんでしまい、つじつま合わせのために新しい理論を作ってしまうのである。 ジェローム・カルダンに言わせれば、何も知らない人間の方がまだマシということになるだろうが、 だからといって、大した勉強もせずに何千枚、何万枚のチャートを読むことだけをやっても無意味なのは言うまでもない。

というのは、たとえ一生を費やしたとしても、一人の人間が経験できるものには限度がある上に、 自分一人の経験から得られた法則や理論だけで実践できるほど占星術は簡単ではないからだ。 それを補うために先人たちが書いた本を学ぶのである。 理論の裏打ちもないのに、いくら実践を繰り返してもたいして上達はしない。

しかし、理論を身につけて実践を繰り返し、ある程度の腕前になったとしても、実践を怠ると腕前が落ちてしまう。 理論と実践は共に占星術の要であり、どちらかひとつだけでは通用しないからだ。 先に述べたイギリス人にもこれは当てはまる。 つまり、学んだ理論を実践からのフィードバックによってじゅうぶんに確認しなかったためにはずした、 すなわち腕前が落ちてしまったということだ。 したがって、一度身につけた技術を維持するために、実践を通して勉強を続ける必要がある。 そして、プロならさらに技術の向上を心がけるべきだろう。 占星術の勉強に終わりはない。

1998年9月
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