皇室と占星術
國分秀星 Q.H.P.

これは学習研究社刊『エルフィン』の1994年9月号に発表した記事から抜粋し、紙面の都合で削除を要求された部分を復活させ、一部修正を加えたものです。 『エルフィン』は一般読者を対象にした雑誌であるため、詳しい専門的な説明はしていませんが、あえてそのままにしました。 著作権はフォル事務所にありますので、転載・引用の際はご一報ください。

「どうやら皇室では行事の日程を占星術で決めているらしい」

この噂を聞いたとき、皇室では亀の甲羅を焼いて占うのだという先入観があったため、最初はまったく信じることができなかった。

ところが、実際に調べてみると、少なくとも天皇陛下と皇太子殿下については、それが単なる噂ではなく本当らしいとわかった。西洋占星術で結婚式や旅行などにふさわしい日時を決めるものをイレクションというが、その観点から見て、実によくできたチャートをいくつか発見したからだ。

チャート1は1993年6月、皇太子殿下と小和田雅子さんの結婚の儀において、賢所に入られた瞬間のチャートである。

<チャート1>

まず、太陽、月、木星の関係が絶妙だ。太陽は木星とトラインを形成していたが、すでにオーブからはずれてしまっている。しかし、月が木星との正確なトラインから分離しつつ、太陽に接近のトラインを形成しているので、月が仲介役となって木星の影響を太陽へ伝えることになる。だから、分離してしまった太陽と木星が再びアスペクトをつくっているのと同じ効果が得られ、夫(太陽)と妻(月)の結婚生活における幸運(木星)が保証されたことになるわけだ。

次に金星を見ると、本来のサインであるおうしにあり、とても品位が良い。結婚のイレクションでは、愛情やパートナーシップを象徴する金星を良い状態にすることを最も重要視するが、そのときの最優先事項が品位なのだ。

今述べた4つの天体はどれも配置が良いだけでなく、火星や土星などからも損なわれていない理想的な状態だ。お二人のご婚約が報道されたとき、「結婚の儀は5月か6月で調整中」という宮内庁からのコメントも発表されたが、実はその2カ月のうちで、これだけの好条件が揃うのは6月9日だけなのだ。

また、アセンダントの状態もすばらしい。しし29度には獅子の心臓・レグルスがある。ロイヤルスターのひとつであり、プトレマイオスによれば、火星と木星を併せたような性質をもつという、この高貴で幸運な恒星がアセンダントにあるのは、単におめでたいばかりでなく、日嗣の皇子の結婚式にぴったりではないか。

もうひとつだけ例をあげる。チャート2は1993年9月に天皇陛下が訪欧された際、専用機が羽田空港から出発した瞬間のチャートだ。一見、あまり良いチャートではないように感じられるが、よく見ると、占星術的な配慮がなされたと思われる箇所がある。

<チャート2>

海外旅行へ出発するときは、外国を象徴する第9ハウスに金星が木星が位置していることが望ましい。チャート2では、まさにそのとおりに金星が第9ハウスにあり、月が接近のトラインを形成し、どちらも他の天体から損なわれていない。第5ハウスの月は速やかな帰還、つまり、旅先で病気になったり、事故に遭ったりせず、無事に戻ってこられることを意味する。

だが一方で、幸運全般を象徴する木星に火星が接近し、天王星・海王星からスクエアで損なわれている。もちろん、木星が損なわれていないときを選べばいいのだが、そうなると木星や天王星・海王星のように動きの遅い惑星の場合、数カ月の単位で時期をずらすことになってしまう。もし、出発日を大幅にずらせないとしたら、この例のように、損なわれている天体を比較的目立たないサクシデントハウスへもってくるのはイレクションでよく使われるテクニックだ。

また、火星がアセンダントのルーラーとなるように処理しているところも見逃せない。アセンダントは旅行をする人、つまりこの場合は両陛下を象徴するが、こうすれば木星が火星から損なわれているのではなく、両陛下の象徴星が木星に接近することになるので、まったく問題はない。

きわめつけはMCだ。またしてもレグルスがあるではないか。アセンダントやMCのような非常に目立つ位置にレグルスがあるチャートが2枚も続けて出てくると、単なる偶然とはとても思えないのだが……。