未来予知(1)
國分秀星 Q.H.P.

近頃、The Warrior of Astrologyを訪れた人たちからいただくメールのうち、ネイタルチャートから未来予知をするのが難しいというものが目立つようになった。 最初は、レクティファイしていないために予測した時期がずれるのだろうと思ったのだが、いろいろと聞いてみると、そうではなく、何が起きるのかがわからなかったり、過去に起こった事柄が明確に表示されていないことがあるというのだ。

未来予知ができない原因はいくつか考えられる。 占星術を学び始めたばかりの人にとってはホラリーよりもネイタルの方が興味深いものだが、具体的なイベントを予測するというように、本格的にやろうとすると、ホラリーよりもネイタルの方がはるかに複雑である。 ちゃんとやり方を知っていれば未来予知はさほど難しいことではないが、複数のことを同時に考える必要があり、慣れないうちはそれがなかなかできない。

また、それ以前にきちんとしたやり方を知らないということもある。 メールをくれた人のうちの一人は、神保町の原書房で手に入る程度の本はすべて読んだし、カルチャースクールその他に通ってみたりしたのにうまくいかないと言う。 ところが、その人が読んだり習った内容を聞いてみると、不完全なのである。 なかにはまるででたらめなものまであった。 やり方が間違っているのに、正しい答えを出すのはいくら何でも無理だろう。

そこで、ネイタルにおける未来予知の概略を示しておく。

最も重要なことは、ネイタルチャートに表示されていないことは起きないということだ。 言い換えるなら、ネイタルに表示されている事柄がいつ起きるのかを見るのが未来予知なのである。 起こりもしないのに、トランジットやプログレッションの表示があったからと言っていては、一年中右往左往させられるに違いない。

たとえば、交通事故に遭うという表示がネイタルチャートにないのに、アセンダントルーラーにプログレッションやトランジットの天体がかかわっても交通事故には遭わない。 インチキな占い師はこういう時「危ないから乗り物には乗らないように」などと警告し、クライアントが無事でいると「私の言うとおりにしたからだ」などと得意になって威張るものだが、元々何も起きるはずがないのだから当たり前である。 もっとも、こういう簡単なトリックにひっかかってしまう方も悪いのかもしれないが。

だが、ネイタルチャート1枚から将来起こる得る出来事を読みとるというのは意外にできる人が少ない。 ホラリーを経験していれば簡単なのだが、ほとんどの人はホラリーを勉強する前にネイタルの未来予知に進んでしまうので、本来ならできるはずのものが不完全なままなのだ。 (とくに出来事の規模を判定できないようだ。) だからまず第一にネイタルチャートのなかから何が起こり得るのかを見いだしておくべきである。

次にあげたいのはセカンダリープログレッション。 ほんどの人はラディックス、セカンダリープログレッション、トランジットの組み合わせで読むようだが、セカンダリープログレッションほど当たるようで当たらず、当たらないようでいて当たるという不確実なやり方はない。 したがって、私の仲間内には鑑定の現場でセカンダリープログレッションとトランジットだけを使う者はいない。

そもそもセカンダリープログレッションは、きわめて個人的な事柄が主に表示されることを認識する必要がある。 ブルース・ハマースローあたりのライターたちは「セカンダリープログレッションは人間の内面的な変化、プライマリーディレクションは現実世界の現象を表す」と言っているが、これは正確ではない。 セカンダリープログレッションは非常に個人的かつ身近なことが表示されるという方が正しい。

また、セカンダリープログレッションより確実で計算が容易であるという理由でソーラーアークディレクションを推奨するライターがいるようだが、時期の精度が今ひとつである。 ソーラーアークも元々は赤経に換算して計算するものなのに、計算の容易さを求めるが故に黄経で計算しているからだ。(数式を記憶できる関数電卓を買えばいい。)

ネイタルから未来予知をする必要がある場合、私は主に一度一年法を使う。 (ここで言う「一度一年法」は一般に普及している一度一年法とは異なる。) これはプライマリーディレクションを簡略化したものなので時期の精度は落ちるが、セカンダリープログレッションより確実でソーラーアークより正確である。

もちろんプライマリーディレクションが使えればそれに越したことはない。 しかし、正確に計算できたとしても(これについては改めて書きたい)、秒の単位まで出生時刻をレクティファイしないと時期を正確に出せないため、厳密なレクティファイが前提となり、あまり現実的ではない。 どうせ時期がずれるのであれば、その補正のためにトランジットとセカンダリープログレッションを併用し、大まかなところは一度一年法を使うのがもっとも現実的かつ確実なやり方だと思う。

以上がアウトラインである。 実際にはこれ以外の技法も使うが、それは時期を出すためのものがほとんどであり、やはり基本はネイタルチャートから起こり得ることを読みとっておくということに変わりはない。

なお、一度一年法については各自が洋書を読んで勉強して欲しい。 どの本で説明されているかはあえて述べないでおく。 (というより、ずいぶん昔に読んだので、どの本に書いてあるのか思い出せない。3日かけて探したにもかかわらず。) ディレクションならディレクションで、何かひとつのことを勉強しようと思ったら、それに関係する本で手に入るものはすべて買ってしまえばいい。私はいつもそうしてきた。 洋書といえどもくだらないものが多いので、時にはクズのような本を買ってしまうこともある。 しかし、日本で占いを習う場合、1年間の授業料は20~50万円である。 航空便で取り寄せたとしても、高い授業料を払って半可通の人間から習うよりは、安上がりで間違いない方法だと私は思うのだが。

1998年10月