占星術と方位

國分秀星 Q.H.P.

日本で占い師をやっていると、当たり前のように方位について質問される。これは気学が一般に浸透しているためであるが、西洋占星術では正確な知識がないと失せ物や家出人について、その在処と居場所を正確に占うのは難しい。

伝統的な技法を学ぶまで、私がもっとも信頼を置いていたのはアイビー・ジェイコブスンの"Simplified Horary Astrology"だった。しかし、この本はタイトルが示すとおり技法が簡略化され、いわばホラリーのクックブックのような体裁になっいるので、例題にないようなことを占う場合に困ることになる。方位の出し方について説明されてはいるものの、例題には家の中での遺失物しかなく、自宅の外での行方不明や遺失物と判断の仕方が異なるため、あまり参考にならない。また、他のテキストもハウスを中心に見るやり方のため、時として割り出した方角がずれることがあった。

これに対して、ウィリアム・リリーをはじめとする昔の占星術師たちは、まずサインから方位をだし、ハウス位置によって補正するというやり方を取っている。実際にやってみると、こちらの方がぴったりと出るのがわかる。ただ、こちらはひとつの天体だけでなく、月やディスポジターの位置も考慮するので複雑であるから、ある程度の経験がないと、いきなりは使いこなせないかもしれない。一例を示そう。

守秘義務があるので詳しいことは書けないが、依頼者は音信不通になってしまった人(仮にAさんとする)の居場所を探していた。Aさんはマンションに一人で暮らしていたが、どうやらそこにはもう住んでいないらしい。実家に戻っているわけでもなさそうだ。また、何らかの事情で住むところをなくし、友人の家を転々としているのかもしれない。占星術で居場所がわからないだろうかという依頼である。

Aさんを表す火星は第12ハウス、おとめにある。もしハウスだけを考慮するなら東南東なのだが、リリーのやり方に従い、私は真南もしくは南南東、距離は50kmと推定した。しかし、南南東だと50km先は海の中になってしまうので、そちらを切り捨てた。ここまでは別段難しくない。

問題なのは、真南に50kmほどいった付近にはAさんの実家と音信不通になる前に住んでいたマンションがあることだ。ひょっとすると電話番号を変えただけで、同じマンションに住んでいるのかもしれないし、依頼者を避けるために家族に口裏を合わせてもらっているのかもしれない。あるいは依頼者が言うように、友人宅を転々としている可能性もある。しかし、私は火星のディグニティに注目し、実家でも友人宅でもなく、マンションあるいはアパートを借りて住んでいるはずだと考えた。

また、火星はてんびんから逆行してサインが変わっているので、以前のマンションから引っ越したのだろう。ただ、これについてははっきりと依頼者には言わなかった。(当てすぎは禁物である。)

結果は的占。Aさんは私がチャートから読みとったとおり、真南に50kmほど離れた都市のマンションに住んでいることがわかったのだ。そして、同じ町内の別のマンションに引っ越していたのである。

1998年5月
[ Home  |  Articles ]
© 1998 FOL Office. All rights reserved.