ホラリー占例:新しい仕事は見つかるか?

國分秀星 Q.H.P.


これは Considerations (Vol.XVIII, No.4, 2003)で発表した“A Job Question”というアーティクルを翻訳したものです。 著作権はフォル事務所にありますので、転載・引用の際はご一報ください。

クエレント(質問者)はエンジニアとして自動車メーカーで働いていたのだが、職務内容に満足していなかったため、独立もしくは転職を考えていた。 その年一杯で退職する意向を会社に伝えてあったので、年内にはどちらにするか決めなくてはならなかった。 「年内に新しい仕事が見つかるか、それとも独立するのか?」  これが質問だった。

Chart: 15 Oct 1998, 04.22 p.m. JST, 139E46 35N44
15 Oct. 1998, 04:22 p.m. JST, 139E46 35N44.

ホラリー占星術ではチャートがラディカルか(判断しても差し支えないか)どうかを見る必要がある。 これについて、ウィリアム・リリーはアワールーラーとアセンダント及びアセンダントルーラーの類似性にしか触れていないが、アブラハム・イブン・エズラはアセンダントで何かしらのディグニティを持つ天体がアセンダントにアスペクトを形成しているなら、チャートはラディカルであると述べている。(*1) このチャートでは、アセンダントおひつじのイグゾルテーションルーラーであり、火のトリプリシティの昼のルーラーである太陽がアセンダントに対してオポジションとなっている。 したがって、このチャートはラディカルである。

まず、月とアセンダントルーラー火星が雇用を意味する第6ハウスにあるのを見て、私はクエレントが転職するだろうと考えた。 もし独立するのであれば、これらの天体はアンギュラーハウスにあるはずである。

逆行する土星が第1ハウスにあり、質問された事柄が成就しない可能性が表示されているのだが、このチャートの場合は土星が職業を表す第10ハウスのルーラーであるため、悪影響を及ぼさない。 むしろ良い表示である。 その土星に対して月がトラインで接近し、イグゾルテーションとトリプリシティによるミューチュアルリセプションとなっている。 (ホラリーの権威であるザエルが、土星を火のトリプリシティの第3ルーラーとするギリシア式トリプリシティルーラーを使っていたことを認識するべきである。)

しかしながら、月は次のサインへ入らないと土星とトラインを形成しない。 こうした場合、質問された事柄はクエレントが諦めるか忘れるかしない限り実現せず、予想以上に長い時間がかかるのが常である。 そこで私は、クエレントは新しい仕事を見つけるが、年内ではなく翌年になるだろうと判断した。

するとクエレントから、それはいつ頃になるだろうかと重ねてきかれた。 考慮しなければならない事柄がいくつもあるため、ホラリー占星術で成就のタイミングを判定するのは簡単なことではないが、もっとも単純なやり方はアスペクトのオーブに入っているシグニフィケータの黄道上の距離を見ることである。 月と土星の間にはまだ5度あり、5ヶ月後を暗示している。

もうひとつの可能性は4ヶ月後である。 これは金星と太陽の間に4度近い差があるためだ。 どうして金星と太陽が出てくるのか不思議に思う向きもあるかもしれない。 この例のように、現在いるところから新しいところへ移るような質問の場合、第7ハウスは新しい場所を表す。(*2) 金星はクエレントが入社するであろう新しい会社を意味する第7ハウスのルーラーであり、太陽はアセンダントのアルムーテン(ある点において最もディグニティをもつ天体)となっている。 また、金星と太陽のコンジャンクションは肯定的な答えを導き出す表示である。

月と土星よりも、新しい会社を表す第7ハウスにある金星と太陽の方が重要だと私は考えた。 アンギュラーハウスでカーディナルサインの場合、黄道上の度数差は通常は日の単位になるのだが、年内には実現しないという先の表示から、転職するのは4ヶ月以内、おそらく2月の前半になるだろうと私は答えた。

11月にクエレントはある会社の求人に応募し、2回の面接を受けた。 面接でかなり良い感触を得たものの、採用通知は来なかった。 クエレントはしかたなく別の求人を探すことにして、その会社のことは忘れてしまったのだが、翌年1月の最終週になってようやく正式な採用通知を受け取り、2月1日にその会社に入社した。 質問から3ヶ月半後のことだった。

*1:イブン・エズラの“Book of Questions”にあったと記憶していたのだが、改めて探してみると該当個所が見つからないので、アブ・マシャーかグイド・ボナタスの本かもしれない。
*2:“Christian Astrology” p.371


付記
このアーティクルはウィリアム・リリーを盲信する人たちへの警鐘として Considerations へ投稿しました。 「土星がアセンダントで逆行していると質問を破壊する」という一節が“Christian Astrology”にありますが、アフォリズムは状況によって取捨選択しなければならないのに、これを杓子定規に解釈してチャートを判断してしまった人がいたからです。 しかし、この例のように、逆の答えが出る場合もあります。
このチャートを判断するときに使ったのは、第7ハウスが新しい場所を示すというところを除いて20世紀の技術です。 アルムーテンなども“Christian Astrology”が再版される前の20世紀の本に書かれていますし、そもそも17世紀の技術はほとんどアラン・レオやビビアン・ロブスンが伝えています。 (ラディカルかどうかの部分は後になってから知ったもので、アーティクルを書くときに付け加えました。)
ウィリアム・リリーがすべてだと思っている人たちにとっては、アイビー・ジェイコブスンやバーバラ・ウォッターズなど20世紀の占星術を土台にしていたという理由でオリビア・バークレイすら批判の対象になります。 ミセス・バークレイが言った traditional astrology とは、占星心理学ではない本来の占星術、すなわち未来予知のための占星術であり、必ずしも古い占星術だけを指しているのではなく、20世紀の技術すべてを否定したのではありません。 ところがその真意を理解できない人が少なからずいます。
20世紀の技術がいけないと言うのなら、中世の技術を誤解した17世紀イギリスの占星術師たちはどう評されるべきでしょうか。 20世紀に開発された技術を使わずに、あらゆる状況で正しくチャートを判断できるでしょうか。
情報を取捨選択することができるなら、“Christian Astrology”は極めて有用な本です。 オリビア・バークレイは有効な部分を拾い上げて応用することに優れていました。 私もそうなりたいと思って日々努力しています。

2007年6月

関連アーティクル

  • 『ホラリーに関する誤解(4)』
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