1987年の嵐で見事な大木が何本か倒れてしまいました。
私は西洋占星術についても似たような印象を抱いています。
西洋占星術は非常に古いカシあるいはスギの巨木のようなものです。
しかし、過去3世紀の間の嵐によって倒れてしまいました。
その根は古代に植えられ今でも残っていますが、私たちは西洋占星術を根から切り離してしまいました。
「根っこは問題ではない。心理学や科学といった現代の若木を接ぎ木しよう。そして、薪にしてしまった方がいい」
それでも、それを学ぶつもりがあるなら、幹はまだ残されているのです。
現在の混乱にもかかわらず、伝統的な占星術の神髄を再び獲得することは不可能ではありません。
「伝統的な占星術」とは、過去数千年以上にわたって蓄積された膨大な知識を意味し、
そこには、マンデン、ホラリー、ネイタル、イレクショナル占星術が含まれています。
過去の文献を研究する理由は、昔の占星術師たちのやり方を学ぶことによって、現代の技術を改善したいからです。
単に古いものをわけもわからずに真似したいからではなく、そこに学ぶべきものがあるからです。
占星術とは、天体の動きを通して、この地球上に起こる全ての出来事と精神の働きの関係とを研究することです。
あるいは、16世紀イタリアの有名な占星術師カルダンが述べているように、
「最高神が影響を及ぼし、下層のものを支配するのが天空である」
あなた方が最高神を信じるかどうか、あるいはそれを宇宙生命の力とかエネルギーと呼ぼうが、
存在するあらゆるもののパターンを示す法則を学んでいることに気づかなくてはなりません。
近年の自称アストロロジャーや心理学者たちが何かのはずみで考えついたものを学んではならないのです。
私たちがするべきことは、評判や名声のために仮説的な解釈を発明することではなく、
宇宙の法則を見つけだすこと、それらの決まりを解読する努力をすること、そして
それらの意味と目的を理解することです。
今世紀、根拠のない多くの発明がなされ、真実が歪められたことで、私たちは価値あるものをたくさん失ってしまいました。
既に古い占星術の体系に組み込まれているものがあるのも知らずに、
自分たちが欲したあらゆるものを発明し、加えることが自由にできると感じていたのです。
その変化は混乱と矛盾を生み出しました。
ある人たちは占星術をもっと親しみやすいものにするために、またある人たちは簡略化のために、
そしてある人たちは目新しいものを求めるためにアイデアを発明してしまったのです。
そこで困るのは、誰かが新しい方法を発明すると、別の人がそれと正反対のものを発明すること、
そしてほとんどの人がじゅうぶんに基礎を学んでいないので、目の前にあるバリエーションのうちの
どれが正しいのか判別できないことです。
私の著書『ホラリー・アストロロジー・リディスカバード』の前書きでロバート・ハンドが述べているように、
「非常に多くのものが発明されたので、あるゆるものがいつも全てのことを意味し、何もなくても何かしら意味する」わけです。
私は、過度の発明が自ら失敗を招いたというロバート・ハンドの意見に賛成です。
彼はシンボルを使う際に厳密さが必要であることを指摘していますが、
それらの意味について正確な知識をもつべきだということを意味しているのだと私は思います。
それが第一にあるべきです。
たとえば、1500年前にパルチャスがある質問に対して占星術によって明確な答えをだすことができたのを知っていますか。
(訳注:ホラリーのことを指している)
17世紀のウィリアム・リリーと彼の弟子たちも同じことができましたし、そのやり方を説明していますが、
私たちはあいまいで意味のないものになるくらい新しいものを足したり発明してはいけませんし、
物事の核心を追求することを忘れて、まわりくどい言い方をしてもいけません。
ご存じのように、私はホラリーの講座を教えています。
ホラリーは非常に実践的な技術です。
ホラリーのいいところは、質問をされたときに、実際に確かめることのできる回答をださなくてはならないことです。
あいまいなことを言ってお茶を濁すことは許されませんから、占星術を試す良い試金石となります。
もし回答が正しければ、正しい道からそれずに、正しい方法を使っていることになるわけです。
首尾一貫して目的地に安全に到達することによって車を運転できることはおわかりでしょう。
実際に車を運転することと、セールスマンのようにただそれについて話すことの間には大きな違いがあります。
アクセルが何であるかを実際の経験によって知る必要がありますし、間違ったことを教える人たちをはね除けるべきです。
現在、実占をおこなう優秀な占星術師が書いたものよりも、はるかに上回る数の本が出版されています。
言うのは簡単です。
ボナタスの"Anima Astrologiae"(訳注:ウィリアム・リリー編)の冒頭にあるリリーの言葉には、はっとさせられます。
リリーはその本が、「(占星術によって)大ボラを吹こうとする者ではなく、真理を探究するため(占星術を)実践しようとする誠実な生徒のためのもの」であると述べています。
確かに私たちを占星術の研究に駆り立てる動機は数多くあるでしょう。
私自身の動機は、天体の動きが地球上の生命に影響を及ぼすことと、「下にあるものは上にあるものと同じである」
のように生命はひとつであることを表すシンクロニシティの明確な証拠を発見するためでした。
私の動機は未来予知ではありませんでしたが、それでも未来予知はそうした証拠をもたらすものです。
常に占星術は未来予知と関連づけられてきましたが、今では天気予報以外にシリアスな未来予知を聞くことはほとんどありません。
昔の人たちの未来予知の技術は、たとえば毎年シリウスが太陽と共に上昇するのとナイル川の増水が同時期であるということのように、観測から発達したのだと思います。
古代において、自然科学的な現実の研究である天文学とその意味を解釈する占星術はひとつでした。
古代文化においては、自然を観測することにたいへん熱心だったようで、
結果として、少なくともギリシアでは、内面の精神の現れと考えられていた美意識をもっていました。
私たちが学ぶべきものをもっている過去の偉大な占星術師たちについてお話ししていこうと思います。
彼らが唯物主義に陥っていらず、また私たちとは異なる規範に生きていたというだけで、
彼らの著作が無視されているのは不合理なことです。
おそらく、ここにいるの人の多くはロバート・ハンドによって組織されたプロジェクト・ハインドサイトに寄付をしているでしょう。
(訳注:ロバート・ハンドは1997年5月にプロジェクト・ハインドサイトを離れ、ARHATに戻っている。)
ロバート・ハンドは過去の偉大な占星術師たちの著作を英訳する膨大なプロジェクトに専心しています。
私が思うに、もっとも注目すべきことは378年にポーラス・アレキサンドリヌスによって書かれたものが初めて英訳されたということです。
ポーラスがプトレマイオスと異なる点は、水のトリプリシティーのルーラーを昼間は金星に割り当てていたことです。
しかし、エッセンシャルディグニティに馴染みのない今日の平均的な占星術師のうち何人がその相違点と
アレキサンドリヌスの著作の価値を評価できるでしょうか。
それを理解するためには、まず彼が述べている伝統的な技法を理解しなくてはなりません。
そして、そこに現代の大部分の占星術師たちの知識との大きなギャップがあります。
プロジェクト・ハインドサイトの努力とは別に、グレアム・トビンが占星術師のためのラテン研究会を始めたのは重要なことです。
そこでは経験豊かな占星術師たちがラテン語から直接翻訳しています。
この講演の途中で、グレアムにジャンクティヌスの本から何行か翻訳してもらいましょう。
そうすれば、古い占星術がどれだか見事かつ簡明なものだったか理解できるはずです。
もし、あなたがラテン語を理解できるなら、グレアムに連絡するべきです。
わずかですが、既に英訳されている古典文献を読むことができるのも事実です。
たとえば、キリストと同時代に生きていたマニリウスの『アストロノミカ』は入手可能です。
それは、当時信じられていたことを表した美しい叙事詩で、地球が球であるということも含まれています。
この本はロエブから出版されています。
私が知る限り、それはハウスについて書かれたもっとも古い本であり、その時代には、
太陽・月とアングルが強調されていたそれまでの原始的な占星術から脱却していたことを示すものです。
それより1世紀後に書かれたプトレマイオスの『テトラビブロス』にも見いだすことができるように、
ハウスは番号ではなく名前で呼ばれていました。
マニリウスはハウスがテンプルと呼ばれていたことと、神である惑星が特定のテンプルに居所をもっていたことを述べています。
水星は、頭、言葉、記憶に関連しているので、第1ハウスに居所をもっているとされ、
スティルボン、グリステナという自らの名前を第1ハウスにも与えています。
成功を表す第10ハウスに水星があることは雄弁さによる成功を生み出すことからもわかるよにう、
水星は頭脳と関連があります。
近頃、金星が頭脳に関係しているという無責任な発明があったようですが、そうなると、
間違いなく全ての惑星が頭脳に関係していることになるでしょうね。
いつまでこういうことが続くのでしょうか。
これは、ロバート・ハンドが述べた厳密さの欠如、つまりシンボルの関する知識のあいまいさの見本です。
ご覧のように、それぞれのハウスはそこにある惑星の性質を帯びています。
ですから、金星は第5ハウスに居所があり、幸運のハウスと呼ばれる第5ハウスは歓楽の金星の性質をもっているわけです。
マニリウスは、テンプルを通してゾディアックが回転していくことと、惑星もその性質を変化させながら
テンプルを通過していくことを書き表しています。
このように、西洋占星術において、少なくとも2千年にわたってハウスとサインの区別がなされていたことがわかるでしょう。
ヒンドゥ占星術というのは別の学問です。
したがって、西洋占星術を学ぶのであれば、ハウスとサインを同一視してはならないことに注意するべきです。
リリーは、「ハウスについての正確な知識をもたずに占星術をやろうとする者は、
置き場所もないのにたくさんの家具を買い込んでしまう愚か者と同じである」と述べています。
人生におけるすべての行動、出来事、人や物はいずれかひとつのハウスに分類されます。
これは見解上の問題ではなく、何世代にもわたって確かめられてきた事実です。
そしてすべての占星術にあてはまります。
ですから、今世紀、ある人が初心者に占星術を教えるために、次のような新しいアイデアを発明したのは不幸なことでした。
「第1ハウスは最初のサイン・おひつじに相当するから火星。第2ハウスはおうしと金星」
占星術のアルファベットと呼ばれ、以来混乱をもたらし続けてきたでたらめな発明に関する私の意見を証明する例です。
また、「てんびんが第7ハウスであり、土星がてんびんでイグザルトするなら、土星は第7ハウスでイグザルトするはずだ」
これが間違っていることは私が保証します。
土星が第11ハウスを、また木星が第12ハウスを支配するというのも間違いです。
なぜなら、第11ハウスはもっとも幸運なハウスであり、大ベネフィック木星の性質を帯びているからです。
ただし例外もあって、人体の部位についてはサインとハウスの間に類似するものがあります。
でも、その点においてだけです。
もし、みなさんがハウスを使わないとしたら、チャートの解釈は明確なものとなりません。
あたかも地球と離ればなれになったかのように結びつきがなくなり曖昧なものとなります。
マニリウスは第1ハウスをスティルボンと呼びましたが、プトレマイオスの時代にはホロスコプスと呼ばれていました。
古い本にホロスコープと書かれていたら、それはアセンダントのことを述べているのであり、
チャート全体のことではありません。
第1ハウスは肉体を表す、生命のハウスです。
ホラリーでは質問者を示しています。
第2ハウスは第1ハウスの資産を表し、4世紀のファーミカスはルクラム(金銭)と呼びました。
どの惑星の居所なのかわかりませんが、マニリウスはプルートの入口と呼んでいます。
第3ハウスは月の居所で、それは月の動きが速く、形を変化させていき、
短い旅行や私たちがコミュニケーションと呼ぶもののように、過ぎ去っていくものを支配するからです。
兄弟のハウスと呼ばれています。
デウス、神を表す第9ハウスの正反対に位置することから、プトレマイオスの時代には、デア、女神と呼ばれていました。
第9ハウスはいつでも宗教と神に関連づけられていました。
したがって太陽の居所です。
太陽という言葉はかつて神と同義語でした。
ベッティウス・バレンは、太陽と木星のトラインのことを神と木星のトラインと表現しています。
教会は第9ハウスに属し、また世俗的な社会では哲学や深い思考、高度な教育、
そして現象面とは正反対のものや遠距離の旅行も属しています。
また、ビジョンや夢も神から来るものなので、このハウスに含まれます。
ゴークランが発見した、卓越したスポーツ選手がこのハウスに火星をもっていることの理由は、
熱・乾という同じ性質の太陽によって火星が強化されるためで、
それによってゴークランの結論は惑星の性質の伝統的な解釈に裏付けられていると私はいつも考えてきました。
私は、占星術が沈滞したり、発展するのを止めるべきだと言っているのではありません。
発見と創造的なアイデアは必要ですが、でたらめなルールが考え出されて受け入れられる前に、
占星術の基礎を理解するべきだと言っているのです。
たとえば、以前私の生徒だったリー・レーマン(訳注:Whitford Pressからいくつかの著書を出版している)は
ゴークランに発見された火星の位置を取り上げ、統計処理によって、
それらが主に火星と土星のタームにあることを突きとめました。
スポーツ選手に求められる、さらなる活力と忍耐力をもたらすことになるので妥当なものと言えるでしょう。
これは、惑星のタームの位置を証明し、サインが1〜30度ではなく、0〜29度であることを立証しています。
第4ハウスはチャートの基底です。
プトレマイオスはロワーミッドヘブンと呼び、建物や土地・鉱山のように、運ぶことのできない固定されたものを表します。
それは源泉であり、始めと終わりを表しています。
父親や老人を象徴し、土星の居所となっています。
1950年代、マーガレット・ホーンはうまいアイデアを考えだしました。
かには4番目のサインで月に支配されるから、第4ハウスは父親ではなく、母親を表すというルールを発明したのです。
占星術師たちはまたしても混乱に陥り、土星を母親に関連づける者さえいました。
ファーミカスは、第4ハウスが両親を示すと述べています。
しかしながら、もし母親だけについて言及するなら、第4ハウスの正反対にある第10ハウスをとるべきです。
このように、すべての占星術において、父親を表示するものは第4ハウスとそのルーラー、
もしくは昼は太陽、夜は土星、また第4ハウス中の天体です。
母親は第10ハウスとそのルーラー、また昼は金星、夜は月、あるいは第10ハウス中の天体に示されます。
第10ハウスは栄光と権威のハウスで、社会における成功と地位を表します。
第11ハウスは、先に述べたように、もっとも幸運なハウス、グッドディーマンで、ベネフィック木星に支配されます。
今の世の中では木星に関心をもつ人はあまり多くありません。木星は神がもたらす最大の幸運です。
第12ハウスは不運であり、土星と関連しています。
裏切り、隠れた敵、陰口、自己破壊ばかりでなく、孤独や大型動物なども象徴しています。
他の不運なハウスについてまだお話ししていませんでした。
第6ハウスは、マニリウスはラボリス(労働)、プトレマイオスは不運と呼びました。
労働は明らかに不快なものと考えられていたのです。
このハウスは病気や小動物も表しています。
第8ハウスは、第7ハウスに示される人物の資産を示し、そのカスプのサインのルーラーはロード・オブ・デスと呼ばれます。
伝統的には、サインよりも天体のほうがはるかに重要な意味を持っています。
サンサインコラム(訳注:「今週/今月の星占い」の類)がお金を作り出すがために、
近年、サインが強調されてきました。
誰でも自分の太陽のサインを知っています。
商業占星術(訳注:星占いを指している)は無害ですし、一般大衆と占星術師の間の緊張を解きほぐしてきました。
幸運なことに、私たちはエンターテイナーにランク付けされていますから、
ニック・カンピオンやバーナード・フィッツウォルターが火あぶりの刑になることもありません。
でも、今世紀のはじめは事情が違っていて、1914年から1917年にかけて、アラン・レオはフォーチュンテリングの罪で起訴されました。
彼は苦し紛れに、自分の鑑定は「傾向」を示しているにすぎないと異議を申し立てました。
彼はクライアント(偽名を使った警察官)に家族の誰かが死ぬかもしれないと警告していたため、
裁判官はそのような表現が傾向とは見なせないと却下し、レオは有罪になりました。
この忌まわしい判決の結果、レオは世論を騒がせたりイギリスの法律に抵触しないように占星術を作り替えました。
この顛末についてはパトリック・カリーの"A Confusion of Prophets"に載っています。
彼は神智学と心理学を混入して占星術を稀釈しました。
それは同じシンボルを使うという部分では古い占星術を彷彿させますが、すっかり変わってしまい、
本当の占星術とは言えませんでした。
占星術が継承してきたものをレオは生活のために売り飛ばしたのです。
イギリスでは1988年まで魔女法は撤廃されませんでしたが、占星術師たちはエンターテイナーに分類されていたため、
罪に問われることはありませんでした。
今世紀、心理学的なものの見方は非常に人々の人気を得やすいことがわかり、
実際に心理学者とかそういったものになりたかったら、占星術を盛り込むのが一番手っ取り早い方法となっているのです。
しかしながら、もし、性格分析ばかりでなく、あらゆる側面を扱う純粋な占星術をやろうとすることは、
エンターテイナーに分類される私たちにとって諸刃の剣となります。
まじめな研究が成果をだすと、ゴークランの研究のように、それは顧みられません。
また、試験管の中の液化した金属がある惑星の上昇に伴って反応した話が思い出されます。
これはテレビカメラの前で行われたのですが、結果があまりにも決定的なものであり、私たちのエンターテイナーとしての地位を覆すため、放映されませんでした。
そうしたわけで私たちは未だに克服すべき偏見という大きな障壁をもっているのです。
一生懸命に働いても真剣に受け取られないというのは一般に認められた私たちの運命です。
しかし、人々を楽しませ、太陽サインの特徴を語ることは、より状況を悪化させることでしょう。
シリアスな占星術においては、サインは天体を表すための形容詞でしかないことを忘れてはなりません。
サインは、国、病気、身体的特徴、場所の4つの事柄にだけ関係しています。
すべての占星術において、物事を支配するのは天体です。
オーブは天体に固有のものであり、アスペクトごとのものではありません。
天体は球であり、オーブも球です。
丸いオーブがオーラのように天体の周りで輝いているというのは常識です。
その一方で、アスペクトは円ではありません。
チャートの中の天体は、サイン、エグザルテーション、トリプリシティ、ターム、フェイスといった黄道上の度数によるエッセンシャルディグニティと、チャートによって異なるアクシデンタルディグニティ(たとえば、アングルにあるとか動きが速いとか、もしくは良い位置にあるときなど)の両方によって、その影響力を評価しなくてはなりません。
天体のエッセンシャルディグニティの表はプトレマイオスのオリジナルは残っていませんが、私は『クリスチャンアストロロジー』にあるリリーのものを使っています。
というのは、リリーはそれを実際に使っており、それが11世紀のアル・ビルニのものに近いからです。
5世紀にプトレマイオスの占星術(実際にはすべての占星術)はヨーロッパでは禁止されました。
プトレマイオスの著作はアラビア語に翻訳され、アラビア人に保護・保存されてきたのです。
ヨーロッパとアラビアの占星術が混じり合いました。
その時代には有名なアラビア人、ユダヤ人の占星術師がいました。
アル・キンディとアブ・マシャーはアラビア人でしたし、エイブラハム・イブン・エズラはユダヤ人でした。
カイロの古いユダヤ教会に行った人はエズラのことを聞いたことがあるかもしれません。
そのユダヤ教会は、彼が教会の負債を肩代わりしたことから、彼の名前が付けられました。
スペインとイタリアを経由して再び占星術がヨーロッパに戻ってきたのは13世紀になってからのことです。
プトレマイオスがアラビア語からラテン語に翻訳され、3世紀にわたってすべての大学で教えられました。
彼は優れた人物で、音楽、地学、光学、天文学についての著書があり、地球と月の距離を計算していました。
占星術の思想に膨大な影響を与えたのです。
ヨーロッパに再び占星術の興隆をもたらしたのはボナタスでした。
ボナタスは、後世のリリーと同様に、占星術を生徒たちに指導することに取りかかりました。
彼の本はまだあまり占星術を知らない読者に向けられています。
プロジェクト・ハインドサイトはボナタスの著書のうちのいくつかを翻訳し終えたところで、
もちろん私はホラリーについて書かれたセクションを堪能しました。
たとえば、リセプションの重要性。いかにアスペクトの効力がリセプションと関わる惑星の性質に依存しているのかを
ボナタスはたいへん細かく説明しています。
ボナタスの翻訳者は、リリーがミューチュアルリセプションのみで、リセプションを使わなかったと考えていましたが、
私は『クリスチャンアストロロジー』の中のホラリーについてのセクションだけでも、
ミューチュアル、もしくはミクストリセプションとは別に、129カ所もリセプションについて述べられているのを知っています。
もし疑うなら、『クリスチャンアストロロジー』の185ページを参照してください。
そのページはアスペクトと関連したリセプションの説明に終始しています。
おそらく、13世紀のボナタスがリセプションの天体と書いているのに対して、
17世紀のリリーがリセプションをディスポジターと呼ぶことがプロジェクト・ハインドサイトの翻訳者を
間違った結論に導いたのでしょう。
リセプションの天体はディスポジターと同義です。
てんびんにある天体は、金星のサインと土星のイグザルテーションによってリセプトされますが、
これは金星がサインによるディスポジター、土星がイグザルテーションのディスポジターと言うのと同じ意味です。
翻訳者がリリーを研究していなかったことが嘆かわしく不本意な結論に導いたのです。
リリーはプトレマイオスの著書と同じく、ボナタスにも精通し、影響を受けていました。
ついでに言えば、プトレマイオスを研究すると、やはりディスポジターの重要さに気づくでしょう。
惑星について述べている箇所で、食のディスポジターに言及しています。
「フォールもしくはディトリメントの天体は他の惑星のディスポジターにはならない」とボナタスは述べていますが、
リリーはこの意見に同意できないようで、注釈をつけています。
みなさんは「当然ディスポジターにはならないだろう。エッセンシャルディグニティをもたないなら、
どうしてディスポジターになれるというのだ」と考えるかもしれません。
でも、そうだとしたら、やぎの月はどうなるのでしょうか。
やぎで月はディトリメントになりますが、
地のサインの夜のトリプリシティを支配しているのにディスポジターにならないのでしょうか。
あるいは、かにでフォールとなる火星は水のトリプリシティを支配しています。
どちらが正しいのかはみなさんの課題となるでしょう。
ディグニティの表なしに天体の強弱とディスポジターを知ることはできませんし、
特定の度数、あるいはチャート全体のアルムーテンを得ることもできません。
チャートはおもしろみのないものになるでしょう。
チャート2はエリザベス1世の戴冠式のチャートです。
初期のイギリスの占星術師で思い浮かぶのは、エリザベス1世付きの占星術師だったジョン・ディーでしょう。
彼は宮廷において重要な人物で、エリザベス1世の海外エージェントでした。007のようなものでしょうか。
彼は1559年に女王が戴冠したときのイレクションを行ったことで有名です。
当時、統治の成功は占星術で選ばれた瞬間の良し悪しに依存していると認められていました。
このチャートを最初に検討したのは、アナベラ・キットスンのセミナーにおいてで、これはいつも参加する価値があります。
有用なお手本が含まれているので、私の本にもこのチャートを載せています。
それはイレクションをやる際にはネイタルチャートを参照する必要があることを示しているからです。
ジェフリー・コーネリアスが指摘したように、戴冠のときのルミナリーズは女王のネイタルの木星・金星とトラインです。
(おひつじ20度の月がいて20度の木星にトライン、みずがめ4度の太陽がてんびん3度の金星にトライン。)
ガドブリーに示されたこのチャート(訳注:エリザベス1世のネイタル)はアセンダントがいてですが、
エリザベス1世と同時代のジャンクティナスはやぎをアセンダントにしています。
エリザベスの祖父がやぎ16度にアセンダントがあるので私はジャンクティナスが正しいと思いますが、
いずれにしても、ルミナリーズとベネフィックの関係は有効です。
ボナタスが「惑星には真似できないほどの大きな幸運を恒星は与える」と述べているように、
このようなチャートにおいても恒星は使われています。
恒星は恒久的な影響を与え、建設や状況が長く続くような場合に使われます。
ここでは月が栄光と名声をもたらすレグルス(ロイヤルスター)とパートオブフォーチュンにトラインです。
パートオブフォーチュンへのアスペクトは常に考慮しなくてはなりません。
また月がパートオブフォーチュンにアスペクトをもっていればボイドではありません。
月がボイドになる日時の小冊子を作っている人たちはその事実を見落としています。
既に述べたように、もう一人、エリザベス1世と同時代の人にジャンクティナスがいます。
ではこの偉大な占星術師のラテン語による一節をグレアム・トビンに訳してもらいましょう。
(エリザベス1世/訳注:これはガドブリーの本にあるチャートなので、グレアムの説明と食い違っている)
この大変穏やかな女王は、ネイタルチャートにおいて、5つの天体がエッセンシャルディグニティをもっている。
すなわち、木星と金星はドミサイルにあり、月はエグザルテーションとジョイ、水星はトリプリシティ、火星はデーカンにあるのだ。そのため、彼女は父親から王国と遺産を得ることができたのである。
それだけでなく、話題を集めた1484年の大会合は正にさそり21度にあり、彼女の権力と権威の偉大さ、名誉の証を物語っている。
また、それは彼女の人生に確かな威厳を添え、有名にし、女王にしたのである。
同様に各々のサインにある金星と水星は魅力ある話し方と雄弁さ、そしてすべての国々との親善を示し、
また、おうしの月は紛れなくあらゆる言語と幅広い学問を身につけていることを表している。
(メアリー女王)
スコットランドのメアリー女王(ジェイムズ5世の娘)は1542年、生後7日で統治を始めた。
父親が亡くなり、彼女はフランス皇太子のフランソワ2世(後にフランス国王となる)と結婚した。
しかし、夫であるフランソワ王の死後、未亡人となった彼女は宮殿を離れてレイムの町に引退した。
彼女はロサリンジアを訪れてから、カライスを離れてスコットランドに戻り、国民たちに恭しく迎えられたが、
帰国と共に多くのトラブルに巻き込まれたのだった。
スコットランド王国の騒ぎは日に日に大きくなり、そのため、反女王派による治安妨害を考慮して、女王は急いでフランスへ旅立った。
しかし、旅の途中で彼女はイングランドの女王に捕らえられ、ポンファと一般に呼ばれる城に幽閉された。
女王の過去の幸福と現在の不幸を調べれば、運命が人間にも影響することがはっきりするだろう。
なぜなら、この女王の出生図では火星と土星がスクエアかつ交換(訳注:ミューチュアルリセプション)で、
バイオレントサインにあり、第7ハウスと第12ハウスを支配している。
月はやぎの太陽のアンティションにあり、旅行の特徴を示している。
しかし、彼女の身に起こった幽閉、多くの危機と不運、夫の死を予示するのは、第12ハウスみずがめの火星と第7ハウスさそりの土星である。
西洋占星術のクライマックスはまさしくリリーが1647年に870ページを越える大作『クリスチャン・アストロロジー』を書き上げた17世紀にあります。
これは伝統的な占星術に関した本の極めつけです。
ホラリー同様にネイタルについても書かれていますが、リリーが説明するやり方と技法を理解すれば、
すべての占星術に応用できます。
リリーは300冊以上の文献を読み、それをラテン語から英語に翻訳しました。
プロジェクト・ハインドサイトもそれらの本をすべて翻訳することを表明していますから、それに期待しましょう。
ところで、プロジェクト・ハインドサイトとウィリアム・リリーの努力の違いを指摘しておきたいと思います。
リリーは非常に経験豊富な人でした。
デレク・パーカーは、リリーの伝記"Familiar to All"の中で、
1654年6月から1656年9月の間に4000を越える鑑定記録が残っていることを述べています。
リリーは驚くほど働き者だったわけです。
内戦の間、彼は議会派にアドバイスし、たいへん有名になりました。
ラテン語と占星術に堪能でしたが、もちろん、300冊の本を一語一語訳したわけではなく、
占星術に精通していましたから、学ぶ人たちが十分に理解できるように、情報の中から最良の部分のみを選別することができました。過去の偉大な英知に頼るばかりでなく、彼は自分自身の結論を付け加えたのです。
リリーは、ある著者があるやり方を提唱しているのに対して別の著者が異なる考え方をすること、
そしてリリー自身が見つけたさらに有効な方法を説明することができたのです。
プロジェクト・ハインドサイトの翻訳者たちに欠けているのはこの能力です。
リリーが示した結論は、現代の間違った発明とは比べものになりません。
リリーはチャートを丸ごと使って理由を説明していますから、彼が述べるテクニックを誰でも学ぶことができるのです。
自分自身で確かめられるわけですから、実際にやってみれば、それが正しいことがわかるでしょう。
もし、それを否定する人がいたとしたら、その人たちはやり方が間違っていたか、経験不足かのどちらかでしょう。
リリーは自分が述べたことをしっかり理解していたのです。
リリーは黒死病にかかり外出することができませんでした。
黒死病で死んだ使用人を埋葬したことがあるので、彼は毎日死を待つばかりでした。
彼の著作における純粋さと誠実さはそうした状況によるものではないかと私は思います。
学ぶ人たちが簡単に理解できるように、多くの詳細な記述が入念に系統立てて述べられていて、
彼の巨大な作品(手書きで870ページも書くことを考えてご覧なさい)はプロジェクト・ハインドサイトの火急の仕事とはまったく異なります。
彼らはきっとそれら300冊の本を誠実に翻訳すると思いますし、私たちはそれらの本を読めることを彼らに感謝するでしょう。
しかし、彼らが膨大な情報を翻訳して仕事を終えたとしても、それらを比較、選択、統合して、
『クリスチャン・アストロロジー』にあるような、教えるための構造にするのに必要な実践経験が依然として不足しているのです。
この他にも有名なアストロロジャーがいます。
何人か例をあげるなら、ガリレオ(彼が海王星を発見したときのチャートがありますが、当時それは木星の衛星だと考えられました)、地理学者でもあったマーケイター、ニュートン、ケプラー、レジオモンタナス、フラムスティードなどがいます。
フラムスティードは王立天文台の天文官で、1675年にグリニッジ天文台を設立する際、次に示すチャートをイレクションしました。
これをお見せするのは、
グリニッジで始まる新しい千年期
の成功に関連していることを望むからです。
このチャートは、まず恒星の使い方からフラムスティードが優れた占星術師であったことがわかります。
名誉と名声を与える非常に幸運な星スピカはMC上にあり、ロイヤルスターのレグルスは太陽とコンジャンクトしています。
(これは1675年8月の位置です。)
先に述べたように、大きな建造物などを作るときは恒久さをもたらす恒星を考慮します。
そして2点目として、木星のアンティションの使い方がフラムスティードの優秀さを示しています。
木星はアセンダントを支配しているので、国民を表します。
一見、第12ハウスにあるので良くないように見えますが、実は違います。
そのアンティシア、あるいはソルスティスポイントは富を表す第2ハウスのカスプに正確に重なり、
それ以後、私たち国民に富と繁栄をもたらしました。
リリー以後、我が国における占星術は、18世紀に科学的な考え方が台頭してきたのとは比べものにならないくらい衰退しました。
この辺の事情はパトリック・カリーの'The Prophesy and the Power'で説明されており、
著者は王立学士院の設立と、善意と理性の会員たちが占星術師だろうと誰であろうと、自分のやっていることを科学的にできるのなら受け入れたことを述べています。
彼らは、占星術が確実に証明できる科学になれば再び人々の賞賛が得られるだろうと思ったのです。
悲しいことに、今でもそれを信じている占星術師がいます。
しかし、芸術、恋愛、音楽のように科学では解き明かすことのできないものがあります。
それらがもたらすものは観察できるのに科学的に証明することはできません。
占星術もそれと同様です。
ゴークランがやったように、証明できるものがあると、偏見がそれを否定します。
それ以降の数世代によって、17世紀の占星術の知識はいろいろな物と混ぜ合わされて破壊され、誤解されるようになってしまったのです。
このレクチャーの中で、鑑定をやる占星術師たちに読んで欲しいと思う何人かの著者、すなわち17世紀の占星術師にふれました。
まず第一にリリーとその弟子たち、ネイタルに熱中したガッドブリーとイレクションの専門家ラムゼイ。
また、有名な占星術師でありハーバリストのカルペパー。
医師でもあったサウンダース。ヘンリー・コウリー。チャールズ1世付きの占星術師ジョージ・ワートン。
もし、あなたがたが17世紀の本を研究するなら、それはさらに古い本、ひいては古代にまで続く足がかりとなることがわかるでしょう。
しかし近道はありません。
手っ取り早く結果を得ようとする現代的な態度は正しい占星術を行う上での助けにはなりません。
これは最高にすばらしい知識であり、身につけるのに何年もかかります。
それでも学ぶ価値はあります。
イレクションに興味があるなら、ロブスンのような現代の著者が霞んでしまうくらいショーナーに驚くでしょう。
ショーナーの本はリリーの本とお互いに補うところがあるので一緒に読むべきです。
ショーナーの他に学ぶべきなのはラムゼイとボニコントリアスです。
ネイタルが好きな人は『クリスチャン・アストロロジー』のネイタルの章を読んでもいいでしょうが、
そこで使われる手法を理解するためには、その本の最初の部分を理解しておく必要があります。
ジョン・フロウリーはモンタルモの著作が重要だと言っています。これはプロジェクト・ハインドサイトによって翻訳されています。
もしホラリーに関心があるなら、私の本やバーバラ・ウォッターズの'Horary Astrology and the Judgement of Events'は取り付きやすいはずです。でもリリーの本無しにはじゅうぶんとは言えません。
現在では、プロジェクト・ハインドサイトが翻訳したボナタスのホラリーの本もあります。
さあ、果敢に立ち向かい古い占星術の美しさを再び探求する時が来ました。
それをいったん手にしたら、あなたがたは二度と手放してはなりません。