占星術と英語

國分秀星 Q.H.P.

このホームページでいくつかのアーティクルを発表して以来、多くの人からどんな本を勉強すれば良いかという問い合わせがあり、 私が指導する生徒以外にも洋書を読んで勉強する人が増えたことは私にとって最高の喜びである。 それがこのホームページを作った目的のひとつだからだ。

ただ、実際に英語の本を読み始めてみると意外に難しいと感じるはずだし、 またそのために英語で勉強するのをためらっている人もいる。 西洋占星術を学ぶ上で英語力が不可欠であることは、 既に何度か述べてきた ので繰り返さない。 ここでは、占星術を勉強するという観点から英語をどうとらえるかを私の経験を交えて書いておく。 参考になれば幸いである。

学校で習った英語は基礎にしか過ぎない
学校の授業で使う英語のテキストにはあまり長い文章はでてこない。 リーダーのテキストにしても、せいぜい数ページ程度の短い話がいくつか並んでいるだけである。 また、テキストとしてペーパーバックの小説などを使うこともあるが、 週に何ページくらいのペースで授業が進められていたか、思い出してみるといいだろう。 長い時間をかけて、短い文章を読んでいたはずだ。

つまり、学校での英語教育とは、たとえば占星術を洋書で勉強するというような現実での応用のための基礎を身につけるためのものなのである。 だから大学の英文科を優秀な成績で卒業したとしても、実際に応用したことがなければ意外に読解力のないこともあり得る。 (もちろん、文法の理解、語彙力の面では通常の人より優れているだろうが)

もし授業で使ったテキスト以外に英語の本を読んだことがないなら、初めのうちはきつくて当然である。 それをどのくらいの期間で克服できるかは、学校で習った基礎がどれだけ身についているかに依存するが、 それが最初の難関になることには変わりない。 そういうものだと思って、諦めずに続けるべきだ。

文法を勉強し直す
長らく英語を使っていなかったから忘れてしまったとか、英語はあまり得意でなかったという人もいるだろう。 しかし、それは大した問題ではない。 日本の中学校での英語教育は、他の非英語圏の国々よりも高い水準にあり、英文法のほとんどは中学で習っているから、 それさえ思い出せば、文法がわからないために難しく感じることが少なくなるはずだ。 だから高校受験のための英語の参考書でも読めば済む。 買う必要はない。図書館で借りればよい。

英和中辞典を買う
本を読んで占星術を勉強するということは、専門書を読むということである。 リーダーのテキストになるような、単語数が1000とか2000に限定されたものではなく、 ネイティブスピーカー(そうでない場合もあるが)が書いた生々しい英文である。 それを読むには見出し語の多い英和辞典が必要だ。 だからポケットにはいるような辞書ではなく、やはり中辞典を使うべきだろう。

私は小学生の時に買った英和辞典を大学受験まで使っていた。 しかし、それで占星術の本を読むには限界があった。 英語に堪能な友人に相談したところ、旺文社の英和中辞典を薦めてくれた。 研究社のものより見出し語が多いからというのが彼の理由だった。 以来、旺文社の英和中辞典だけを使っているが、単語の意味がわからなくて困るということがなくなった。

いちいち日本語に訳さない
リリーのChristian Astrologyの初めから600ページほどを読むのに私は1週間かかった。 これは17世紀の英語だからで、現代文なら1日に100ページ以上は読める。 これにはコツがある。頭の中でいちいち日本語にせずに、英語のまま理解するのだ。

ところが読んで理解するだけでなく、それを日本語に訳すとなると、1日に5ページ程度のペースに落ちてしまう。 少なくとも私の場合、単に理解することと、翻訳することの間にはそれくらいの違いがあるので、 英語のまま考えればかなり時間を節約できる。

細かいことには必要以上にこだわらない
これは私に質問のメールをくれる人たちを見ていて感じることである。

私たちの目的は西洋占星術を学ぶことにあるのであって、英語はそのための手段にしかすぎない。 したがって、占星術に直接関係ない文章(どんな本にでも多かれ少なかれ含まれている)を細かいニュアンスまで理解しようとすると、いつまでも解釈に悩み続けることになる。 このあたりも学校の英語の授業と違う点である。

また、ネイティブスピーカーだからといって論旨を明瞭に表現できるとは限らないし、 表現が曖昧で正確にその意図を読みとれない文章だってある。 (だから著者に聞かない限りわからないようなことを私に質問されても困るのである。)

翻訳ソフトは役に立たない
私は翻訳ソフトを使おうと思わない。必要ないからだ。 なかには翻訳ソフトを使いたいという人もいるかもしれないが、あまりお勧めしない。

プロの翻訳家に言わせると、翻訳ソフトが訳したものは下訳にすら使えないので、初めから人間が訳した方が速いそうだ。 プロが使う翻訳ソフトは、一般に出回っているものよりも遙かに高価で高性能であるにも関わらず、使いものにならないのである。 (某パソコンメーカーの日本法人は日本語マニュアルを作るのに翻訳ソフトを使っているため、 とんでもない誤訳が混じっていて閉口させられた。)

わけのわからない日本語を読むくらいなら、英語の原文を読む方が頭を悩ませずに済む。

読めれば書ける
書くことについても少し触れておく。

ある程度読むことになれてくると、今度は自然に書けるようにもなる。 ただし、やはり最初は難関があるが、それは読むときほど大きなものではない。 また、書ければ話せるし、読むのと同じスピードなら聞き取ることもできる。 英語に限ったことではないが、ひとつの言語を習得する基本は読解力にあるのだ。

会話はともかく、英語で自分の意図を表現できるなら、世界各国の占星術師と意見を交換することができる。 これはすごいことだ。 もし著者の住所やメールアドレスがわかればラッキーだが、わからなくても、 出版社気付で手紙を書けば返事をもらえるだろう。

また、英語でアーティクルを書けば、同じものを英語圏の国の出版社に送ることもできるのだ。 事実、私が書いたいくつかのアーティクルがイギリス、アメリカ、ニュージーランドの占星術雑誌や占星術団体の機関誌に掲載された。 日本とは西洋占星術の歴史が違うので、高度な内容のものでも部分的に削除されたり、書き直しさせられないことも気に入っている。

書くことを躊躇する必要はない。 文法通りにきちんとした英文が書ければ、「イギリス人よりも美しい英語だ」と誉められるのだから。 (こういう風に誉められているうちはまだまだ下手なのだそうだが、あまり気にしなくていいと思う。)

まとめ
私たちはプロの翻訳家や英文学者になろうというのではないのだから、あまり細かいことにはこだわらず、 本来の目的である西洋占星術の勉強をするに足りるだけの英語力でじゅうぶんだと思う。 目的を見失わずに、適度に力を抜いて取りかかるといいだろう。 そして、ある程度の英語力がつけば、確実に世界は広がるのである。

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